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忍法帳: 忍法帖

あら くさ 忍法 帖

4 夕暮れにかかり、視界は一気に閉ざされる。 山道の真ん中で、うずくまっている小僧がいた。 まだ十になっているだろうか。 「何をしておる?」 甲賀忍者、御影聖次がいつの間にか、その小僧のそばに立っていた。 「蟻を見てるんだ」 小僧は御影聖次がいきなり気配を現したのにも驚かず、熱心に地面に目を向けていた。 「蟻を?」 「うん。 珍しい蟻だよ。 もう夜になるってのに、巣に帰ろうとしない」 「蟻は働き者だからな」 「おじさん。 何も知らないね」 小僧は厳しく言った。 「蟻ってのは働き者じゃないよ。 大体三分の二くらいの蟻はいつも休んでいるもの。 働いているように見えるのは、働く番になった三分の一の蟻がせこせこしているからさ」 「ほう。 よく見ておるな」 「まあね」 そこでやっと小僧は顔を上げた。 「坊主。 名は何と言う」 「おいらは、三助」 「おもしろいものを見せてやろうか」 御影聖次はにやりと笑った。 口笛を吹く。 その視線をたどって足元へ目をやった三助はあっと驚いた。 字を書いている。 蟻文字とでも言えば良いのか。 蟻が列を作り、いろはにほへと……と隊列を変化させているではないか。 「ひゃっ。 化け物蟻だ」 驚いてから、はっと三助は我に返った。 「そうだ。 大切な用事があったんだった。 おじさん、またね」 子供特有の、すっぱり切り取ったような反応だ。 三助は身を翻して山頂めざして駆け出した。 「……どうやら、敵ではないようだが。 異常なまでの脚力だな」 三助の後ろ姿を見て、御影聖次はつぶやいた。 「さて御苦労だが、もう一回り、この辺りを回って来てもらおうか」 御影聖次は蟻に向かって声をかけた。 口笛を吹く。 蟻達は四方へ、列をなして散り始めた。 そう、御影聖次は蟻を操る忍者であった。 一匹だけ、動かない蟻がいた。 よく見ると、大地に触覚をつけて、細かく身を震わしていた。 それが、恐怖の動作であると御影聖次が気付くにはややあった。 蟻が恐怖する? その意味の示すところに、御影聖次は背筋を思わず凍らせた。 ……敵。 それもとてつもなく危険な相手。 「もうし……」 か細い、女の声がした。 今の今まで、全く気配のなかった背後に、である。 御影聖次は口笛を吹いた。 本能的に極めて危険な気配を背後に感じ取ったのだ。 振り向けばすべてが終わる。 そのような気がする。 「もうし……」 声は近付いた。 人が歩く気配がしないのに。 御影聖次は思わず五メートルも前に飛んだ。 しかし。 「もうし……」 三度目はすぐ耳元で聞こえた。 「ちいっ!」 振り向きざまに刀で切り付けた。 が、 「ほほほ」 相手は何と二十メートルも離れている。 山彦の術か」 遠く離れた相手の耳元へ声を届かせる術だ。 甲賀にもある。 しかしまんまとそれにひっかかったのは、何より恐怖のなせる技だ。 「女……家康公を狙う忍びだな」 「ほほ」 するすると女は近付いて来た。 その顔の美しさに、御影聖次は息を呑んだ。 美しすぎる。 氷のように透明で冷たい。 まるで月のようだ。 人間がここまで美しくなるには、一体どのような魔性の術が必要なのか。 「あたくしは、羅馬忍者、憧等」 「こ、甲賀の御影聖次だ」 御影聖次は柄を握る手に力を籠めた。 「このあたくしを、お斬りになりますのか?」 憧等の目が光った。 妖々たるその眼光は、射られる者すべての理性を奈落の底へ突き落とす。 御影聖次はその目に縛られた。 「ぬう」 御影聖次は必死の自制心で女の瞳の呪縛から逃れようとした。 刀を上段に構えたまま、動けない。 「まさか、あたくしをお斬りにはなりますまいなあ」 憧等の顔が眼前に迫った。 いくら接近してもあらが見えない。 人形のような造形の清烈さだ。 「さあ、いい夢をご覧になって」 赤い唇が妙に輝いていた。 御影聖次の唇を盗みに忍び寄る。 「けい!」 敢然たる気合と共に、御影聖次は刀を振り下ろした。 ずん、と手ごたえがあった。 声もなく、憧等は倒れた。 「ふう」 御影聖次は肩で息をした。 からくも、憧等の妖しい魅力に負けずに済んだ。 忍者ならではの精神力のなせる技であろう。 が、 「……斬ったね」 奈落の底から響き渡るような声がした。 「あたくしを斬った……」 御影聖次は逃げ出したいと思った。 相手は、やはり人間ではない、そう確信した。 「あたくしを……」 目の前に立ち上がったのは、憧等である。 髪を振り乱し、狂気に近い光を投げて来る。 その顔のなんという恐ろしさ、そして美しさであろうか。 ああ、美と恐怖とは表裏のものであったのか……。 御影聖次は麻痺しかけた頭の隅でそう思った。 目の前に赤い唇が近付く。 その口が開くと、牙が二本、白い歯並びの中から覗いた。 食い殺されるのか……。 そう思った時、再び口笛を吹いた。 ……甲賀忍法『黒絨毯』。 そう心の中でつぶやいたのが最後の意識だった。 「御影聖次よ。 あたくしの忠実な僕におなり」 憧等は御影聖次の首筋に噛みついた。 がくん、と御影聖次の体が揺れる。 しぶいたのは、血だ。 憧等は血を吸っていた。 「羅馬忍法『百夜通い』」 口元を染めながら、憧等は笑った。 妖艶な笑いだった。 その前に立つ御影聖次は幽鬼のような表情になっている。 「お行き。 家康の首を取って戻っておいで」 憧等は命じた。 御影聖次がうなづく。 踵を返す。 闇のたちこめた山道を音もなく駆け始めた。 「ふふふ。 いったん、このあたくしに血を吸われれば、永遠に我が僕となるのじゃ」 憧等は会心の笑みを漏らした。 さわさわさわ……。 何かの音がする。 微かだが、広い範囲から、確実にこっちへ向かっている。 「む!」 憧等は慄然とした。 足元に、黒々と集まっているものがある。 蟻だった。 幾万とも知れぬ蟻の大群が、憧等を襲おうとしていた。 これがすなわち『黒絨毯』。 御影聖次が意識を失う前に残した忍法だ。 「何の」 憧等は咄嗟に近くの木の枝に飛んだ。 ふわり、と体が枝に乗る。 だが、その枝にも、びっしりと黒蟻がついていた。 「あぎゃあ!」 憧等は蟻の群れにたかられて叫んだ。 落ちる。 頬の肉を蟻がついばむ。 強力な顎で毟り取る。 腕、肩、腰、脚、そして秘部に至るまで、蟻達は情け容赦なく襲い、噛みちぎった。 さすがの吸血鬼憧等も、一片の肉も余さず食われては、死ぬしかない。 夜の山道にいつ果てるともない絶叫がこだました。 憧等を倒したわけだが、御影聖次は山道を上って行く。 何者かに憑かれたように。 「ありゃ何だ……」 御影聖次が通り過ぎた後で、道端の茂みからひょいと覗いた顔があった。 さっき、道の真ん中で蟻を見ていた小僧、三助だ。 「とんでもない殺気を感じて隠れたけど……さっきのおじさんとは違うぜ、あの顔は。 穏やかじゃないなあ」 首を傾げていたが、 「よしっ」 決心して御影聖次の後をつける。 月がぼんやりと道を照らす。 その朧な世界を、吸血鬼に操られた忍者がひたひたと駆けて行く。 三助は肌が総毛立つのを感じた。

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シカマル忍法帖

あら くさ 忍法 帖

男が目を覚ますと、其処には白い空間が広がっていた。 そして目の前には見事な髭を持つ翁が1人… 「起きたか、迷い人よ。 」 「ここは…?」 翁は答えない。 いや、答える必要もない。 ここはそういう場所だ。 「力の流れは作った。 後はお前次第だ。 」 男は無言を保つ。 「それでは良き忍となるが良い。 」 一段と強い光を放ち…白い空間は解放された。 zzz…ZZZzzz…ZZZzzz…ZZZzzz… 「コラァ、お前らァ!寝るなァ!!」 うん? ああ、またイルカ先生か…めんどくせぇ… この人も良くやるよなぁ… ゴチンッ うぐっ、頭が! 「ナルト、シカマル、チョウジ、キバァ!! お前らぁ、いつになったら真面目になるんだ!!いい加減にしろ!」 うわ〜また始まったよ…イルカ先生の長〜い長〜いお説教… 正直、最近夜更かし多くて睡眠不足なんだよなぁ〜 やべ、欠伸が… ブチッ あ、 「シカマルゥ、お前、俺が怒っている側から!! お前ら全員廊下に立ってろ!!」 はあ、あの先生も良くやるなぁ… 転生してきてそろそろ12年。 いやぁ、最初はさ、俺だってやる気だったさ。 ネジの父さんも助けたかったしさ、ナルト強化計画とかさ、計画立てたよ。 殆ど実行してないけど。 12年も平和だったらさ、そりゃ平和ボケするもんよ。 いくら後4、5年先に世界を揺るがす大戦があるからって… あれ、意外とまずい…? ま、いっか。 明日は明日の俺が頑張るさ。 それがダメでもナルトの主人公補正で勝てるさ。 うん、きっとそうだ。 なんせ主人公だもの。 それにさ、気がついてしまったんだ。 このまま順調に行くと… 前世の俺も真っ青のブラック企業に勤めると… 俺は悟ってしまった。 現実って厳しいんだなぁ… さて…暇だ。 とくれば…、 「あ、シカマルがまた寝やがった!」 「ずるいぞ、シカマル!」 「あいつも変なとこで器用だよなぁ…」 それから10分後、イルカ先生に立ち寝ているところを見つかったシカマルは再び拳骨を喰らっていた… そしてその1カ月後… 「次ッ、奈良シカマル!!」 はぁ、めんどくせぇ、早いとこ受かっちまおう。 試験の内容は簡単なんだし。 「分身の術」 「良し、合格!」 よし、アカデミー卒業っと… 楽勝、楽勝。 授業寝てても受かるっての。 「お、テメーも受かったかシカマル」 「やっぱりシカマルは器用だね。 心配なのは…」 「あいつ、寝てばっかだしな」 「「お前が言うな!」」 さて、ナルトは… あ…、うん。 知ってた。

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長男くんと「バジリスク~甲賀忍法帖~絆」の日常#150

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4 夕暮れにかかり、視界は一気に閉ざされる。 山道の真ん中で、うずくまっている小僧がいた。 まだ十になっているだろうか。 「何をしておる?」 甲賀忍者、御影聖次がいつの間にか、その小僧のそばに立っていた。 「蟻を見てるんだ」 小僧は御影聖次がいきなり気配を現したのにも驚かず、熱心に地面に目を向けていた。 「蟻を?」 「うん。 珍しい蟻だよ。 もう夜になるってのに、巣に帰ろうとしない」 「蟻は働き者だからな」 「おじさん。 何も知らないね」 小僧は厳しく言った。 「蟻ってのは働き者じゃないよ。 大体三分の二くらいの蟻はいつも休んでいるもの。 働いているように見えるのは、働く番になった三分の一の蟻がせこせこしているからさ」 「ほう。 よく見ておるな」 「まあね」 そこでやっと小僧は顔を上げた。 「坊主。 名は何と言う」 「おいらは、三助」 「おもしろいものを見せてやろうか」 御影聖次はにやりと笑った。 口笛を吹く。 その視線をたどって足元へ目をやった三助はあっと驚いた。 字を書いている。 蟻文字とでも言えば良いのか。 蟻が列を作り、いろはにほへと……と隊列を変化させているではないか。 「ひゃっ。 化け物蟻だ」 驚いてから、はっと三助は我に返った。 「そうだ。 大切な用事があったんだった。 おじさん、またね」 子供特有の、すっぱり切り取ったような反応だ。 三助は身を翻して山頂めざして駆け出した。 「……どうやら、敵ではないようだが。 異常なまでの脚力だな」 三助の後ろ姿を見て、御影聖次はつぶやいた。 「さて御苦労だが、もう一回り、この辺りを回って来てもらおうか」 御影聖次は蟻に向かって声をかけた。 口笛を吹く。 蟻達は四方へ、列をなして散り始めた。 そう、御影聖次は蟻を操る忍者であった。 一匹だけ、動かない蟻がいた。 よく見ると、大地に触覚をつけて、細かく身を震わしていた。 それが、恐怖の動作であると御影聖次が気付くにはややあった。 蟻が恐怖する? その意味の示すところに、御影聖次は背筋を思わず凍らせた。 ……敵。 それもとてつもなく危険な相手。 「もうし……」 か細い、女の声がした。 今の今まで、全く気配のなかった背後に、である。 御影聖次は口笛を吹いた。 本能的に極めて危険な気配を背後に感じ取ったのだ。 振り向けばすべてが終わる。 そのような気がする。 「もうし……」 声は近付いた。 人が歩く気配がしないのに。 御影聖次は思わず五メートルも前に飛んだ。 しかし。 「もうし……」 三度目はすぐ耳元で聞こえた。 「ちいっ!」 振り向きざまに刀で切り付けた。 が、 「ほほほ」 相手は何と二十メートルも離れている。 山彦の術か」 遠く離れた相手の耳元へ声を届かせる術だ。 甲賀にもある。 しかしまんまとそれにひっかかったのは、何より恐怖のなせる技だ。 「女……家康公を狙う忍びだな」 「ほほ」 するすると女は近付いて来た。 その顔の美しさに、御影聖次は息を呑んだ。 美しすぎる。 氷のように透明で冷たい。 まるで月のようだ。 人間がここまで美しくなるには、一体どのような魔性の術が必要なのか。 「あたくしは、羅馬忍者、憧等」 「こ、甲賀の御影聖次だ」 御影聖次は柄を握る手に力を籠めた。 「このあたくしを、お斬りになりますのか?」 憧等の目が光った。 妖々たるその眼光は、射られる者すべての理性を奈落の底へ突き落とす。 御影聖次はその目に縛られた。 「ぬう」 御影聖次は必死の自制心で女の瞳の呪縛から逃れようとした。 刀を上段に構えたまま、動けない。 「まさか、あたくしをお斬りにはなりますまいなあ」 憧等の顔が眼前に迫った。 いくら接近してもあらが見えない。 人形のような造形の清烈さだ。 「さあ、いい夢をご覧になって」 赤い唇が妙に輝いていた。 御影聖次の唇を盗みに忍び寄る。 「けい!」 敢然たる気合と共に、御影聖次は刀を振り下ろした。 ずん、と手ごたえがあった。 声もなく、憧等は倒れた。 「ふう」 御影聖次は肩で息をした。 からくも、憧等の妖しい魅力に負けずに済んだ。 忍者ならではの精神力のなせる技であろう。 が、 「……斬ったね」 奈落の底から響き渡るような声がした。 「あたくしを斬った……」 御影聖次は逃げ出したいと思った。 相手は、やはり人間ではない、そう確信した。 「あたくしを……」 目の前に立ち上がったのは、憧等である。 髪を振り乱し、狂気に近い光を投げて来る。 その顔のなんという恐ろしさ、そして美しさであろうか。 ああ、美と恐怖とは表裏のものであったのか……。 御影聖次は麻痺しかけた頭の隅でそう思った。 目の前に赤い唇が近付く。 その口が開くと、牙が二本、白い歯並びの中から覗いた。 食い殺されるのか……。 そう思った時、再び口笛を吹いた。 ……甲賀忍法『黒絨毯』。 そう心の中でつぶやいたのが最後の意識だった。 「御影聖次よ。 あたくしの忠実な僕におなり」 憧等は御影聖次の首筋に噛みついた。 がくん、と御影聖次の体が揺れる。 しぶいたのは、血だ。 憧等は血を吸っていた。 「羅馬忍法『百夜通い』」 口元を染めながら、憧等は笑った。 妖艶な笑いだった。 その前に立つ御影聖次は幽鬼のような表情になっている。 「お行き。 家康の首を取って戻っておいで」 憧等は命じた。 御影聖次がうなづく。 踵を返す。 闇のたちこめた山道を音もなく駆け始めた。 「ふふふ。 いったん、このあたくしに血を吸われれば、永遠に我が僕となるのじゃ」 憧等は会心の笑みを漏らした。 さわさわさわ……。 何かの音がする。 微かだが、広い範囲から、確実にこっちへ向かっている。 「む!」 憧等は慄然とした。 足元に、黒々と集まっているものがある。 蟻だった。 幾万とも知れぬ蟻の大群が、憧等を襲おうとしていた。 これがすなわち『黒絨毯』。 御影聖次が意識を失う前に残した忍法だ。 「何の」 憧等は咄嗟に近くの木の枝に飛んだ。 ふわり、と体が枝に乗る。 だが、その枝にも、びっしりと黒蟻がついていた。 「あぎゃあ!」 憧等は蟻の群れにたかられて叫んだ。 落ちる。 頬の肉を蟻がついばむ。 強力な顎で毟り取る。 腕、肩、腰、脚、そして秘部に至るまで、蟻達は情け容赦なく襲い、噛みちぎった。 さすがの吸血鬼憧等も、一片の肉も余さず食われては、死ぬしかない。 夜の山道にいつ果てるともない絶叫がこだました。 憧等を倒したわけだが、御影聖次は山道を上って行く。 何者かに憑かれたように。 「ありゃ何だ……」 御影聖次が通り過ぎた後で、道端の茂みからひょいと覗いた顔があった。 さっき、道の真ん中で蟻を見ていた小僧、三助だ。 「とんでもない殺気を感じて隠れたけど……さっきのおじさんとは違うぜ、あの顔は。 穏やかじゃないなあ」 首を傾げていたが、 「よしっ」 決心して御影聖次の後をつける。 月がぼんやりと道を照らす。 その朧な世界を、吸血鬼に操られた忍者がひたひたと駆けて行く。 三助は肌が総毛立つのを感じた。

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