精霊の守り人。 精霊の守り人がひどい

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精霊の守り人

皇子救出 バルサは鳥影橋を渡っていた。 その橋は平民用の橋で所々ボロボロになっていた。 この所の大雨で下を流れる青弓川は色が濁り、白く泡立ちながらさかまき流れていて恐ろしい光景だったが、顔色一つ変えずに歩いていた。 ふと上流を見ると、一本上流にかかる橋に第二皇子の行列が見えた。 今年30になる女用心棒は立ち止まってその行列を眺めていた。 一瞬その美しさに惹かれた次の瞬間、牛車の牛が暴れ始めたのだ。 牛車が振り回され横転し中から小さい人影が川に落ちていのが見えた。 バルサは短槍に縄を巻きそれを岸に投げた。 短槍が岩の間に挟まり固定されたのを確認して、縄をもって川に飛び込んだ。 流される皇子をつかもうとするが、あと一歩のところでつかみ損ねてしまう。 そこで奇妙なことが起こった。 体がふわっと軽くなったのを感じた。 荒れくるっていた水の流れが止まり、音さえも消え去り、どこまでも透き通った青い空間が静止していた。 何が起きたかわからないまま皇子に手を伸ばし、掴んだと思った時には手が引きちぎれるかと思うほどの衝撃が来た。 さっきのことが夢なのか、激しい水の流れに飲まれたが、なんとか皇子を岸まで引き上げ蘇生術を施した。 用心棒は市民以下の異邦人であるため、よくて報奨金を渡されておしまいだと思っていたので、この扱いにはとても驚いた。 実際、後で報奨金をわたしので宿を教えるようにと言われた。 しかし、宿におちついたバルサのもとにやってきた使いは、報奨金を二ノ妃の館で接待した後に渡したい、と言ってきたのだ。 それで舞い上がるほどバルサは世間知らずではなかった。 皇族のものが下々のものにやさしくするときには必ず裏がある。 やっかいなことになったと思ったが、ここで断っては逆に無礼なふるまいとしてやっかいなことになるだろう。 仕方なくいわれるままに招待されたが、二ノ妃の歓待は真心こもったものだった。 ご馳走を楽しんだバルサは帰ろうとするが、侍従長に泊まっていくよう言われてしまう。 ここまで来たら素直に従うしかないと諦め、立派な湯殿を堪能し、その後案内されて寝間に入った。 バルサの度胸は並みではなくすっと深い眠りに入った。 次に目を覚ましたのは真夜中だった。 人の気配に気づき目を覚ましたのだ。 なんと二ノ妃と第二皇子がやってきたのだ。 妃はチャグムが命を狙われていること、チャグムにはなにか不思議なものがやどっているのではないかということをバルサに話した。 そしてバルサにチャグムをここから連れ出し守ってほしいと言うのだ。 バルサには断る選択肢がなかった。 ここで断れば口止めに殺されてしまうだろう。 バルサは皇子の護衛を引き受けた。 そして皇子の寝間に火をつけるように言った。 その隙に乗じてバルサとチャグムは抜け道に足を踏み入れていった。 バルサは青霧山脈を超えるつもりだった。 チャグム暗殺を企てているものたちが焼けた宮に死体がないのに気づくだろうから、今夜中に青弓川をわたって山に入りたかった。 そのための支度をトーヤに頼んだのだ。 トーヤが買い物してる間バルサとチャグムはトーヤの家で休んでいた。 ふいにチャグムがうめき、口を大きく開けてヒューっといきを吸い込んだ。 チャグムの胸から喉、頭にかけて青い光がにじみだしたのだ。 バルサはチャグムを急いで起こした。 これは私一人でどうにかなることじゃない、化け物の相手は厳しいと思った。 買い物を終え、バルサとチャグムは出発し、ちょうど見晴らしのいい田の間の畦道にさしかかったところで暗殺者たちが襲い掛かり撃退するも傷を負ってしまう。 バルサたちはタンダの家に行き傷の手当てをしてもらう。 タンダは薬草師であるのと同時にトロガイの弟子で呪術師でもあるためチャグムになにが宿ってるのか聞くがわからないという。 タンダの家で傷の回復を待っているとトロガイがやってくる。 トロガイはチャグムに宿っているものが精霊の卵だと話してくれるが完全に理解できてるわけではないという。 時期が来たらチャグムは海に向かって動き出すらしい。 バルサたちは山奥にある狩穴に拠点を移し、チャグムに宿っているものを調べたり、武術の鍛錬をしたりし、つかのま穏やかな時をすごしていく。 チャグムに不思議な変化が起きた。 いつもは寝起きのいいチャグムが、その日はなかなか起きてこなかった。 体がだるいのだと言う。 トロガイが卵の様子を見ると大きくなり脈打っているという。 その日の夕方、チャグムの悲鳴が聞こえた、タンダはチャグムの意識が精霊の世界に引っ張られているという、バルサは懸命にチャグムを支え落ち着かせることができた。 チャグムはどうして自分がこんなに大変な思いをしなければならないのかと悩むようになる。 バルサは自分の過去のつらい経験をチャグムに話、厳しくも優しく説く。 チャグムは辛いのは自分だけではないと気づき落ち着きを取り戻していく。 変化から二月がたち、その時期が近付くにつれて次第に精霊の卵の謎が明らかになっていく。 皇子の命を狙う者たちもことの重要さに気が付き始める。 チャグムに宿る卵が海を目指して動き始め、精霊の卵を狙う異界の魔物も現れ、一気にクライマックスへ向かっていく。 精霊の守り人 を読んだ読書感想 皆の思惑が絡まり複雑になっていく中、バルサの強い心が変わらずに困難に立ち向かい続ける、そこにとてもあこがれを抱いた。 自然な導入部にバルサの人となりがちりばめられ、物語が動き出した時には、バルサのこと、魅力がわかってしまえる。 彼女が大きな運命に翻弄される中でも強く輝いているように見えるのは幼いころのつらい経験があったからだろう。 そんな彼女を支えてくれる周りの人たちもとても優しく、互いに尊敬していることがわかる。 一人で頑張ることは当たり前で、他人のために頑張れる彼女たちを見て、わたしたちは一人で生きているのではないと改めて感じる作品です。

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シリーズ紹介

精霊の守り人

上橋菜穂子『守り人』シリーズがついに完結した。 昨秋出た『獣の奏者』も各所で絶賛を博し、現在ベストセラー街道を驀進中だが、上橋菜穂子の代表作と言えばやはりこちら。 十年余にわたって書き継がれ、野間児童文芸新人賞、路傍の石文学賞、巌谷小波文芸賞、小学館児童出版文化賞など、児童文学界のあらゆる賞を総ナメにしてきた大河小説だ。 完結を機に全十巻を一気に読み通して、今さらながら、つくづく凄いとため息をついた。 その第一巻『精霊の守り人』が、単行本初版刊行から十年余を経て、初めて文庫化される。 さらにこの四月からは、NHK-BS2の衛星アニメ劇場枠でアニメ版(神山健治監督)の放送がスタートする。 この二十年間にTVアニメ化された国産ファンタジー小説は山ほどあるが、そのほとんどがライトノベル系。 児童文学は非常に珍しく、衛星アニメのファンタジーも、これまでは小野不由美『十二国記』、喬林知《まるマ》シリーズ、雪乃紗衣『彩雲国物語』と、ライトノベル発の原作ばかりだ。 プロダクションIGにとっても児童文学は初挑戦で、この原作が持つポテンシャルの高さが窺える……と言ってもピンと来ない人には全然ピンと来ないでしょうが、とにかく大変な注目作なのである。 物語の舞台は、名前のない異世界。 登場人物たちにとってはそこが世界なので、固有名詞をつけたりはしない道理。 呼びにくくてちょっと不便だが、こういうリアリズムがシリーズ全編を貫いている。 技術文明のレベルは中世初期の西洋程度。 ただし、固有名詞や風土はなんとなくアジア大陸風だし、社会体制もオリジナル(古代日本を思わせる国も出てくる)。 欧米型ハイ・ファンタジーの亜流ではない独自の世界が存在感をもってしだいに立ち上がってくる。 主役は、三十歳の女用心棒バルサと、十一歳の第二皇子チャグム。 児童文学だというのに、修羅場をくぐってきた大人の視線から語られるのが大きな特徴だ。 著者いわく、〈若さの名残を残してはいるけれど、もう若い娘ではない、世間の裏の裏まで見てきた、経験豊かな大人の女が、閉じた宮のなかで神の子孫として育てられていた、無垢な少年を守って闘う、そういう話が心に浮かんできて、その物語を書きたいという衝動に突き動かされるようにして、一気呵成に書き上げた物語なのです。 彼女のような自立した職業女性が違和感なく受け入れられる世界(ジェンダー観からして違う世界)がリアルに構築されている。 新ヨゴ皇国だの、サグとナユグだの、ニュンガ・ロ・イム〈水の守り手〉だの、見慣れない言葉に最初はとまどうかもしれないが、心配無用。 そういう読者のための羅針盤として、最後に恩田陸の文庫解説から引用しよう。 面白い。 下品な言い方だが、「モノが違う」。 それが率直な感想だった。 (中略) 偶然の縁で、女用心棒バルサが命を狙われる皇子を救うことになる見事な導入部。 (中略) この場面を読んで、作者は「私たちの世界」を描こうとしているし、この作品が「私たちのための」物語であると確信したのだ。 しかも、新潮文庫で初めて読む読者には、これから十巻分の長い楽しみが待っている。 今までファンタジーが苦手だと思っていた人も、じっくりつきあってみる価値があることは保証する。 すぐれた異世界ファンタジーの醍醐味を心ゆくまで堪能してほしい。 (おおもり・のぞみ 書評家) 波 2007年4月号より 1962(昭和37)年東京生れ。 川村学園女子大学特任教授。 オーストラリアの先住民アボリジニを研究中。 著書に、『狐笛のかなた』(野間児童文芸賞)の他に、『精霊の守り人』(野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞、バチェルダー賞)、『闇の守り人』(日本児童文学者協会賞)、『夢の守り人』(路傍の石文学賞)、『神の守り人』(小学館児童出版文化賞)、『天と地の守り人』、『虚空の旅人』、『蒼路の旅人』、『流れ行く者』、『炎路を行く者』、『風と行く者』、『「守り人」のすべて』、『獣の奏者』、『物語ること、生きること』、『隣のアボリジニ』、『鹿の王』(本屋大賞、日本医療小説大賞)、『鹿の王 水底の橋』などがある。 2002(平成14)年「守り人」シリーズで巖谷小波文芸賞受賞。 2014年国際アンデルセン賞作家賞受賞。

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NHK大河ファンタジー「精霊の守り人 最終章」Blu

精霊の守り人

皇子救出 バルサは鳥影橋を渡っていた。 その橋は平民用の橋で所々ボロボロになっていた。 この所の大雨で下を流れる青弓川は色が濁り、白く泡立ちながらさかまき流れていて恐ろしい光景だったが、顔色一つ変えずに歩いていた。 ふと上流を見ると、一本上流にかかる橋に第二皇子の行列が見えた。 今年30になる女用心棒は立ち止まってその行列を眺めていた。 一瞬その美しさに惹かれた次の瞬間、牛車の牛が暴れ始めたのだ。 牛車が振り回され横転し中から小さい人影が川に落ちていのが見えた。 バルサは短槍に縄を巻きそれを岸に投げた。 短槍が岩の間に挟まり固定されたのを確認して、縄をもって川に飛び込んだ。 流される皇子をつかもうとするが、あと一歩のところでつかみ損ねてしまう。 そこで奇妙なことが起こった。 体がふわっと軽くなったのを感じた。 荒れくるっていた水の流れが止まり、音さえも消え去り、どこまでも透き通った青い空間が静止していた。 何が起きたかわからないまま皇子に手を伸ばし、掴んだと思った時には手が引きちぎれるかと思うほどの衝撃が来た。 さっきのことが夢なのか、激しい水の流れに飲まれたが、なんとか皇子を岸まで引き上げ蘇生術を施した。 用心棒は市民以下の異邦人であるため、よくて報奨金を渡されておしまいだと思っていたので、この扱いにはとても驚いた。 実際、後で報奨金をわたしので宿を教えるようにと言われた。 しかし、宿におちついたバルサのもとにやってきた使いは、報奨金を二ノ妃の館で接待した後に渡したい、と言ってきたのだ。 それで舞い上がるほどバルサは世間知らずではなかった。 皇族のものが下々のものにやさしくするときには必ず裏がある。 やっかいなことになったと思ったが、ここで断っては逆に無礼なふるまいとしてやっかいなことになるだろう。 仕方なくいわれるままに招待されたが、二ノ妃の歓待は真心こもったものだった。 ご馳走を楽しんだバルサは帰ろうとするが、侍従長に泊まっていくよう言われてしまう。 ここまで来たら素直に従うしかないと諦め、立派な湯殿を堪能し、その後案内されて寝間に入った。 バルサの度胸は並みではなくすっと深い眠りに入った。 次に目を覚ましたのは真夜中だった。 人の気配に気づき目を覚ましたのだ。 なんと二ノ妃と第二皇子がやってきたのだ。 妃はチャグムが命を狙われていること、チャグムにはなにか不思議なものがやどっているのではないかということをバルサに話した。 そしてバルサにチャグムをここから連れ出し守ってほしいと言うのだ。 バルサには断る選択肢がなかった。 ここで断れば口止めに殺されてしまうだろう。 バルサは皇子の護衛を引き受けた。 そして皇子の寝間に火をつけるように言った。 その隙に乗じてバルサとチャグムは抜け道に足を踏み入れていった。 バルサは青霧山脈を超えるつもりだった。 チャグム暗殺を企てているものたちが焼けた宮に死体がないのに気づくだろうから、今夜中に青弓川をわたって山に入りたかった。 そのための支度をトーヤに頼んだのだ。 トーヤが買い物してる間バルサとチャグムはトーヤの家で休んでいた。 ふいにチャグムがうめき、口を大きく開けてヒューっといきを吸い込んだ。 チャグムの胸から喉、頭にかけて青い光がにじみだしたのだ。 バルサはチャグムを急いで起こした。 これは私一人でどうにかなることじゃない、化け物の相手は厳しいと思った。 買い物を終え、バルサとチャグムは出発し、ちょうど見晴らしのいい田の間の畦道にさしかかったところで暗殺者たちが襲い掛かり撃退するも傷を負ってしまう。 バルサたちはタンダの家に行き傷の手当てをしてもらう。 タンダは薬草師であるのと同時にトロガイの弟子で呪術師でもあるためチャグムになにが宿ってるのか聞くがわからないという。 タンダの家で傷の回復を待っているとトロガイがやってくる。 トロガイはチャグムに宿っているものが精霊の卵だと話してくれるが完全に理解できてるわけではないという。 時期が来たらチャグムは海に向かって動き出すらしい。 バルサたちは山奥にある狩穴に拠点を移し、チャグムに宿っているものを調べたり、武術の鍛錬をしたりし、つかのま穏やかな時をすごしていく。 チャグムに不思議な変化が起きた。 いつもは寝起きのいいチャグムが、その日はなかなか起きてこなかった。 体がだるいのだと言う。 トロガイが卵の様子を見ると大きくなり脈打っているという。 その日の夕方、チャグムの悲鳴が聞こえた、タンダはチャグムの意識が精霊の世界に引っ張られているという、バルサは懸命にチャグムを支え落ち着かせることができた。 チャグムはどうして自分がこんなに大変な思いをしなければならないのかと悩むようになる。 バルサは自分の過去のつらい経験をチャグムに話、厳しくも優しく説く。 チャグムは辛いのは自分だけではないと気づき落ち着きを取り戻していく。 変化から二月がたち、その時期が近付くにつれて次第に精霊の卵の謎が明らかになっていく。 皇子の命を狙う者たちもことの重要さに気が付き始める。 チャグムに宿る卵が海を目指して動き始め、精霊の卵を狙う異界の魔物も現れ、一気にクライマックスへ向かっていく。 精霊の守り人 を読んだ読書感想 皆の思惑が絡まり複雑になっていく中、バルサの強い心が変わらずに困難に立ち向かい続ける、そこにとてもあこがれを抱いた。 自然な導入部にバルサの人となりがちりばめられ、物語が動き出した時には、バルサのこと、魅力がわかってしまえる。 彼女が大きな運命に翻弄される中でも強く輝いているように見えるのは幼いころのつらい経験があったからだろう。 そんな彼女を支えてくれる周りの人たちもとても優しく、互いに尊敬していることがわかる。 一人で頑張ることは当たり前で、他人のために頑張れる彼女たちを見て、わたしたちは一人で生きているのではないと改めて感じる作品です。

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