イケメン 戦国 光秀 情熱。 イケメン戦国 THE STAGE ~織田信長編~

【イケメン戦国】光秀をリアルタイムで一緒に攻略ー情熱の恋ルート編|アリポの乙女な世界

イケメン 戦国 光秀 情熱

安土へと帰還して、数日が経った頃。 家康「光秀さん、ちょっと顔を貸してもらえますか」 光秀「ああ、あとで行く」 三成「今お願いしたいのです」 光秀「わかった、そのうちな」 「私からもお願いします! ちゃんとふたりと話して、対策を立ててください」 光秀「やれやれ……」 私は家康と三成くんと一緒に、城内の廊下で光秀さんを取り囲んでいた。 帰ってきて早々、なんでこんなことに…… 光秀さんは、謀反を企み脱獄した罪には問われず、織田軍に戻ることを許された。 けれど、きちんとした釈明をしなかったせいで、今、安土は『は信長様の寝首をかくために舞い戻った』という噂でもちきりだ。 これじゃ前に逆戻り……それどころか悪化してる 「真実のすべてを明かすのは無理でも、町の人たちに理解してもらう方法を探しませんか?」 光秀「やれやれ。 心配性だな、お前は」 頭をそっとひと撫でされ、心臓が小さく跳ねる。 「心配してるわけじゃないんですけど……」 家康「こはる、何あっさりほだされてるの」 「っ、ごめん」 光秀「家康、三成。 人の連れ合いを抱き込むとは、なかなかの策士だな」 三成「お褒めいただき恐れ入ります、光秀様」 家康「この局面で素直に礼を言うお前の神経に恐れ入るんだけど」 三成「家康様にまでお褒めいただけるとは思いませんでした」 家康「俺だってそんなことは露ほども思ってない」 「ふたりとも、喧嘩してる場合じゃ……。 あ!」 家康・三成「え?」 一瞬の隙をつき、私の恋人は姿をくらましていた。 家康「やられた……」 さすが光秀さん……! 恋仲になった今も、光秀さんは行動が読めなくて、捕まえたと思ったらするりと手の中から逃げていく。 困るけど……そんなところもやっぱり素敵だな 笑みがこぼれそうになるのを、奥歯を噛んで我慢する。 三成「仕方ありません。 光秀様がはぐらかすおつもりなら、こちらにも考えがあります」 「うん……今夜、いよいよ決行だね」 家康「美香、わかってる? この件、光秀さんには……」 「ちゃんと秘密にしてるよ」 光秀さんには申し訳ないけど……今回ばかりは思い知ってもらわなきゃ 三成「それでは、今夜」 家康「いい? くれぐれも慎重にね」 「うん!」 ………… 美香たちが早足に立ち去るまで、光秀は廊下の角に身を潜めていた。 光秀「———なるほど、今夜か」 久しぶりだな、この独特な賑やかさ! 仕事の買い出しで城下へやってきた私は、町の空気を胸いっぱいに吸い込む。 光秀さんとも、早くまた一緒に町を歩いて回りたい…… 戻って以降、光秀さんは休みなしに飛び回っている。 私は私で、で本格的に働かせてもらうため、お針子の見習いを始めたばかりだ。 ふたりで出かけるどころか、ゆっくり話す時間さえない。 もっとちゃんと向き合えたら……光秀さんに内緒で、今夜あんなことをせずに済むのに ため息を噛み殺した時——— 光秀「浮かない顔をしてどうした、美香」 「光秀さん……!?」 光秀「奇遇だな。 少々付き合え」 ここ、前にも来た…… 店主が運んできた水菓子の皿と湯呑みを前に、光秀さんと向かい合う。 光秀「それで? ご機嫌ななめの理由を聞こうか」 「……っ、さっき私たちが話をしようとしたら、姿をくらましたくせに」 光秀「何、家康と三成に邪魔されず、お前の可愛い声を聞きたくてな」 さらりと言ってのけ、光秀さんはお茶で唇を湿らせる。 ずるい…… 数日間ゆっくり逢えなかった寂しさを、この人はたったひと言で埋めてしまう。 「機嫌を損ねていたわけじゃなくて……光秀さんと過ごす時間が減って寂しいと思っていただけです」 光秀「なるほど。 にいた間は、ずっとお前を離さずにいたからな」 光秀さんが口の端を上げて微笑むのを見て、机に置いた手に思わずきゅっと力が入った。 あの水辺の城で過ごした数日間……昼となく夜となく、何度も何度も、光秀さんに愛された。 城に到着した日、夜遅くまで部屋に戻ってこなかったのは、溜まっていた仕事の指示を一気に済ませておくためだったと、あとから知った。 どうしよう。 顔、熱くなってきた…… 光秀「三日後には休みが取れる。 お前の休暇も願い出ておいた」 「本当ですか……? 嬉しいです!」 光秀「言わなくても、顔に書いてあるぞ」 「書いてあっても言いたいんです! 楽しみだな……どこに行きましょうか?」 光秀「出歩くのもいいが、俺の御殿に一日中お前を閉じ込めておくのも悪くないと思わないか?」 「っ、それは……」 冗談めかした口調だけれど、この人ならやりかねないと今は身をもって知っている。 「あの……閉じ込めて、何を……?」 光秀「お前が俺にされたいと思うことを、全部」 ああ、もう……っ 「光秀さんを好きになってから、心が右往左往して大変なんです……」 光秀「飽きが来なくていいだろう?」 「他人事みたいに言わないでください。 切なかったり、嬉しかったり、ドキドキしたり……そのうち心臓が壊れそうです」 光秀「そしたら俺のをくれてやる」 握りしめた私の手に、光秀さんの手のひらが載せられる。 ……本気の目をしてる 今度は、じんわりとした温もりで満たされていく。 本当に、この人といると心が忙しい。 光秀「さて、そろそろ機嫌は直ったか?」 「あっ、待ってください。 昼間の話を忘れるところでした」 光秀「そのまま忘れていいぞ」 「よくないです! どうして、町の噂を放っておくんですか?」 光秀「心配してないんじゃなかったか?」 「心配はしてません。 光秀さんは最強ですから!」 何があったって光秀さんなら大丈夫、そう信じてる。 でも…… 「自分の好きな人のひどい噂話をされるのは、悔しくてたまりません」 光秀「お前が気に病む必要はない。 そもそも……その噂を流したのは俺だからな」 光秀さんが!? 「な、なんでそんなことを……? 将軍が信長様を狙うことは二度とありません。 裏切り者のフリをする必要は……」 光秀「必要のないことを、俺がすると思うか?」 「……思いません」 光秀「将軍の企みをいち早く掴めたのは、俺のまいておいた餌に奴らが食いついたからに他ならない。 賢いお前は、この意味がわかるだろう?」 そうか……! 裏切りの噂を常日頃流しておくことで……謀反を起こそうとする人たちを、自分の元に誘い込んでるんだ 改めて思い知らされる。 この人は並々ならない策士なのだと。 光秀「家康と三成も、その辺りは承知の上だろう。 ああして文句をつけてくるのは、京で加勢できなかった腹いせだろうな」 「そこまでお見通しだったんですか……」 光秀さんはやっぱり凄い。 この人の生き方に、私はどこまでも寄り添うと決めた。 ただ…… 「……好きな人が誤解されているのはやっぱり悔しいです。 いつか……ずっと先でいいから、光秀さんがどんなに素敵な人か、世界中に大発表したいです」 光秀「やれやれ、何を言い出すかと思えば」 手の甲を、つ、と指先が撫でる。 ひゃ……っ 光秀「俺がどういう男かは、お前だけが知っていればいい」 「光秀さん……」 光秀「———さて、本題はここからだ」 にっこり笑い、光秀さんは身を乗り出して頬杖をついた。 片方の手は、私の手をがっちり掴んでいる。 光秀「今夜、一体何を企んでいる?」 ……! さっきの話、聞かれてたの!? 「それは、あの……っ」 光秀「家康と三成も共犯らしいな。 この俺に隠し事とは、悪い子だ。 ひどくされたくなければ……わかるだろう?」 『何もかも話せ』と笑顔の圧が迫ってくるけれど…… それだけは出来ない……! 「ごめんなさい! えいっ」 光秀「…………」 手首をひねり、光秀さんの手から逃れて立ち上がる。 「今回ばかりは譲れないんです! お茶、ごちそうさまでした!」 ………… 美香が逃げ出していくのを見送り、光秀はくすっとた。 光秀「仕込んだ体術を活用できているようだな、感心感心」 その時、聞き慣れた声が光秀の背後から響いた。 九兵衛「光秀様、先ほど美香様が出ていかれるのが見えましたが……」 光秀「問題ない。 それよりどうした」 九兵衛「信長様よりお呼び出しです。 重要な要件があるので、今夜、天主へ参るようにと」 光秀「今夜、か……。 わかった」 ………… その夜。 光秀「失礼いたします、信長様」 光秀が信長の部屋へと足を踏み入れると——— パン———ッ! 光秀「!?」 激しい破裂音とともに、色とりどりの紙吹雪が宙に舞う。 光秀「これは、一体……?」 よし、大成功! 「私の国でお祝いに使われるクラッカーという道具です! 佐助くんに文を送って、作り方を教えてもらいました」 光秀「祝いの道具……?」 蘭丸「ちなみに、作るの俺も手伝ったんだよっ!」 家康・三成「というわけで、ご帰還、おめでとうございます」 光秀「お前たち……」 秀吉「いい顔しやがったな、ざまあ見ろ!」 「まあ座れ、そして食え」 並べられたごちそうを見て、光秀さんは肩をすくめた。 光秀「信長様。 重要な要件があると伺ったのですが」 信長「重要だろう。 こはると貴様の帰還祝いだ」 家康「俺と三成で、極秘に計画させてもらいました。 まともに祝の場を用意しようとしても、光秀さんはどうせ断るでしょうから」 三成「城下でどんな噂が囁かれていようと、光秀様がそれを否定せずにいようと……我々は、光秀様が織田軍に戻ってくださって嬉しい。 そのことを思い知っていただこうと思いまして」 光秀「家康、三成、お前たちふたりとも……、詰めが甘いぞ」 家康・三成「えっ?」 光秀「九兵衛、例のものを」 九兵衛の声「はっ」 襖の向こうから声がして、九兵衛さんがお酒の瓶を抱えて現れる。 光秀「宴への差し入れだ。 返礼も兼ねてな」 どういうこと……!? 三成「ご存知だったんですか……?」 光秀「秘密を貫こうと思うのなら、まずは人選を熟考することだ。 まず美香。 ここ数日の挙動を見ていれば俺に隠し事をしていることはひと目でわかった」 「えっ!?」 光秀「それから秀吉。 俺への小言が極端に少なくなっていた自覚はあるか?」 秀吉「何……!?」 光秀「怪しい者を監視していれば、おのずと共謀者を炙り出せる。 顔ぶれさえわかれば、計画の目的もおのずと読み解ける」 じゃあ、サプライズ帰還祝いの計画はバレバレだったんだ……。 そんなぁ……! 三成「さすが光秀様です。 おみそれいたしました」 秀吉「とことん可愛くねえな、お前……!」 蘭丸「ほーんと! つまんなーい!」 家康「次は絶対に騙し通して見せますから」 光秀「やれるものならやってみろ」 信長「功を奏したのはこはるの仕込んだ『くらっかあ』のみか」 光秀「敵襲かと思い、少々身構えました」 少々身構えた程度……。 やっぱり、光秀さんには敵わない 「バレてたものは仕方がねえ。 今夜はとにかく食って騒ぐぞ」 蘭丸「だね! 光秀様、じゃんじゃんいっちゃって!」 がっかりしたムードはすぐに消え、車座になって宴が始まった。 信長「光秀、盃を」 光秀「恐れ入ります」 秀吉「ったく、お前は! 平然とした顔しやがって。 信長様やこいつらがどれだけ心配したと……!」 家康「自分が心配してた筆頭のくせに、人に押し付けないでください」 秀吉「そういうのは言わなくていいんだ、家康」 三成「家康様も皆様が京へ行かれている間、ずっと夜も眠れないご様子だったんですよ」 家康「修羅みたいな顔で戦支度をしようとしてたのはどこの誰だっけね」 蘭丸「もー! おめでたい席で喧嘩してないで、ごはん食べよーよ! この鶏団子、すっごく美味しいよ! 光秀様も食べてみて?」 「うまいと言うまで箸は置けないと思え、光秀」 光秀「———やれやれ。 これほど騒ぐほどのことでもないだろう」 秀吉「なんだその面は。 少しは喜んでみせやがれ」 光秀「頬をつまむな、酔っぱらい」 みんなに取り囲まれた光秀さんは、いつも以上にそっけない。 あ……! これって、もしかして…… 宴が終わったのは真夜中近かった。 静けさに満ちた廊下を、光秀さんとふたりで歩く。 「ふふ……」 光秀「計画が失敗に終わった割には上機嫌だな、こはる」 「だって……喜んでくれてたでしょう、光秀さん」 光秀「…………」 「私、知ってるんです。 光秀さんがツンツンしてる時は、照れてる時だって」 お祝いされるのが本当に嫌なら、計画自体を台無しにすることだって簡単にできたはず……。 計画を暴いて差し入れのお酒を持ってきたのは、きっと照れ隠しだ 「本当によかったです。 こうして安土に戻って来られて。 織田軍のみんなが……光秀さんのことを、待っていてくれて」 光秀「———そこまでだ」 「えっ? わ……!」 両腕で横抱きにされ、慌てて首にしがみつく。 「光秀さん……っ?」 光秀「しー……静かに。 城の者が起きるだろう? お前の可愛い声を聞いていいのは、俺だけだ」 ゆっくりと顔を近づけ、光秀さんが不敵に微笑む。 光秀「言っただろう? 俺がどんな男かは、お前だけ知っていればいいと。 聞き分けのない悪い子には、たっぷりお仕置きをしなければな」 「お仕置きって……っ」 光秀「『くらっかあ』で俺を驚かせた罰。 俺に隠し事をした罰。 それから……可愛いことばかり言う罰だ」 耳に歯を立てられ、囁きがじかに注ぎ込まれる。 それだけで私に熱が宿ったのを、見据える切れ長の瞳は見逃さなかった。 今夜は……何を、されるんだろう 待ち受ける罠への期待が、胸の中でふくらんでいく。 光秀「恋仲になったからと言って、安心してもらっては困るぞ、美香」 「……安心なんか、してません。 今だって、心臓が壊れそうなのに」 光秀「まだまだ……もっとだ。 お前には生涯、俺に溺れていてもらう」 「……はい」 首にすがりつくと、唇を盗まれた。 部屋までほんの数メートル———それが、ひどく遠く感じる。 なんだって、知りたい。 なんだって、ほしい。 あなたのすべてを 心を通わせても尚、この人は底知れない。 どこまでも深みに、私を誘い込んでいく。 それでもいい。 ……ううん、それが、いい。 この愛が、私のすべてだから 暗い廊下を、光る瞳を見つめ合いながら、ゆっくりとふたりで歩み——— 忘れられない夜が、また始まる。 ikemenseriesl.

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戦国【光秀】情熱秘密END

イケメン 戦国 光秀 情熱

Profile CV: 武内 駿輔 誕生日: 10月4日 身長: 181. 0cm 血液型: AB型 趣味: 茶の湯 特技: 鉄砲 チャームポイント: バシバシ下まつ毛 目次 各話別に目次は分けておりません。 ご要望があれば分けます!!• 光秀の着流し• 特別ロングボイス 両ルート恋度MAX特典• 特別ストーリー&激甘ボイス• 物語券 エンディング分岐点 各値60以上で選択可能• 特別ロングボイス• 緑を望む和室 両ルート恋度MAX特典• 特別ストーリー&激甘ボイス• 物語券.

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【イケメン戦国】光秀をリアルタイムで一緒に攻略ー情熱の恋ルート編|アリポの乙女な世界

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「何か気がかりなことでも……?」 光秀「……まあ、あるといえば、ある」 すっと近づいてきた手のひらが、私の頬を包み込む。 感情を隠すことに長けた瞳が今は、憂いを帯びている。 光秀「美香。 俺とひとつ、約束をしろ」 約束……? 光秀「お前は金輪際、戦場に立ち入るな」 「え……?」 光秀「できることなら、義元殿の説得にもお前を連れて来たくはなかった。 義元殿が将軍の元を去るきっかけを与えたお前に、今川家の家臣たちが襲いかからないとも限らない」 「危険は承知の上です。 義元さんが心配ですし、それに私、光秀の役に立ちたくて……!」 光秀「お前の心はわかっている。 この取り引きにお前の力が必要だと言うことも。 何かあれば俺が必ず守る。 だが……前線になりうる場所に連れていくのは、今日限りだ」 愛おしげに、手のひらが私の頬を撫でる。 光秀「義昭様との決着の時が来たら、お前には安全な場所で待機してもらう」 「……そばを離れるなって、言ってくれたじゃないですか」 光秀「戦となれば話は別だ。 前日の本能寺での一戦……内心、気が気じゃなかった」 普段は余裕に満ち溢れている瞳が、わずかに揺らぐ。 光秀「今のとなっては……安土へ来たばかりのお前を迷わず戦場に連れ出せたことが、不思議に思える」 「あの時、光秀さんは……何も知らない私に、この時代の現実を、教えてくれたんでしたね」 光秀「……そうだったな」 ふと押し黙り、見つめ合って気づく。 焼け野原で立ちすくんだあの日から、私たちはずいぶん遠くまで来てしまった。 引き返せないほど、愛し合ってしまった。 もう、何もかもが違う。 私だって、叶うことなら光秀さんに、二度と戦には行かず穏やかに暮らしてほしい。 でも……時代のうねりが、光秀さんを離さない 時には固く繋いだ手を解かなくては、守れない絆がある。 愛には痛みを伴うことを、私は生まれて初めて知った。 光秀「約束しろ、美香。 戦になったら安全な場所で大人しく俺を待つと」 「もし、断ったら……?」 光秀「そうだな……。 お前が『うん』と言うまで、くすぐり倒していじめるとするか」 光秀さは微笑んで、いつものように軽口を叩くけれど——— 手が、少しだけ震えてる…… 怖いものなしだったこの人に、弱点が生まれてしまった。 それが私自身であることが、たまらなく嬉しく、それでいて苦しい。 本当はそばで戦いを見届けたい。 でも……そうすれば、行動の足かせになるだけじゃなく、光秀さんの心にまで、枷をはめることになる 隣になくても、光秀さんの命をつなぎとめることのできる自分であれたなら——— こめかみが痛むほどの、強烈な願いが湧き上がる。 そのためには……私のすべてで伝えるしかない。 光秀さんを、愛しているって 頬を包む手に触れ、そっと口元に導く。 思いを込めて、その指に口づけた。 光秀「…………」 「わかりました、約束します。 ただその代わり……私の心を、戦場に連れていって。 何よりあなたをかけがえなく想う私の気持ちを、決して離さないで」 光秀「美香……」 「そして、光秀さんも約束してください。 戦いに赴くのなら、絶対に生きて、私の元に帰ってくるって」 「……いつからお前は、そんなにも強くなった?」 「あなたに恋をしてからです」 微笑むと、光秀さんの口元もほころんだ。 光秀「約束は破る方が得意だが……今回ばかりは、果たすとしよう」 額に、触れるだけのキスを落とされる。 この唇の柔らかさを、いつまでも覚えていようと思った。 幸村「おい、美香、光秀!」 え……? 遠くから呼びかけられ、光秀さんと共に振り返る。 佐助「その辺を探索していたところ、予想外の事態になりました」 九兵衛「義元様を説得するに当たり、吉と出るか凶と出るか、なんとも言えないところですね」 三人が顔を見合わせて背後に目を遣る。 そこに広がる光景に、私は目を見開いた。 この人たちは……! 光秀「凶だろうと吉に変えてみせるまで。 義元殿の元へ急ぐぞ」 ………… いた……! 森の奥深くを流れる小川のほとりで、義元さんはひとりきりでうずくまっていた。 「義元さん!」 義元「美香……っ?」 幸村「もう逃がさねーからな、バカ元!」 佐助「観念してもらいます、義元さん」 義元「幸村、佐助。 光秀殿まで……」 光秀「諸事情あって、あなたに会いに来た」 元気そうでよかった! それにしても…… 「あの、しゃがみこんで一体何を……?」 義元「このきのこ、美しいと思わない?」 異様な形をした妙に鮮やかな紅色のきのこを指さし、義元さんはにっこりと微笑む。 幸村「お前……っ、のんきにきのこ狩りしてたのかよ!」 義元「これを美術品として収集しようと思って。 どんな時でも美しいものは見過ごせないからね。 人の手が造りだす美も素晴らしいけど、自然の生みだす美も格別だ」 相変わらずマイペース……。 いつも通りでちょっとほっとした 義元さんがしゃがんだまま顔を上げ、優美に微笑む。 義元「幸村、佐助。 追ってきてくれたことは嬉しいけど……俺は今後、自分ひとりの力で生活していくよ」 佐助「それは、あまり賛成できません」 佐助くんは素早く義元さんの背後に回ると、羽交い締めにした。 義元「……」 「佐助くん……!?」 佐助「ひとまずこの場を離れてもらいます、義元さん」 義元「佐助、俺は美術品収集の途中で……」 きのこに伸ばされた義元さんの腕を、佐助くんがパシッと叩く。 佐助「義元さんが収集しようとしてるきのこは、美術品じゃなくて、猛毒です」 義元「え……?」 佐助「これは。 触れるだけで皮膚がただれる、猛毒を持つきのこです」 そうなの!? 不気味な見た目だとは思ったけど…… 義元「へえ……物知りだね、佐助は。 美しい上に猛毒を持っているなんて、ますますそそられるな」 義元さんの美しいものへの執着は、並みじゃないな 幸村「バカ言ってんな義元! 毒で死んだら、美しいもへったくれもねーだろうが」 佐助「義元さんを野山にひとりにしておけないことは、誰の目にも明らかだな」 浮世離れしてるなと思ってたけど、放っておけないひとだな、義元さんって…… 「義元さん、どうか幸村と佐助くんと一緒に、越後へ戻ってください。 色んな意味で心配なので」 義元「……なるほど。 俺を説得するためにこはるをわざわざ連れてきたわけか」 するりと佐助くんの腕から抜け出し、義元さんは優美に着物の乱れを直す。 義元「気持ちはとても嬉しいよ。 でも、俺は……今川家の当主であることをやめたんだ」 当主を、やめた…… 義元「『今川家の人間として有終の美を飾りたい』という彼らの願いを、俺は叶えてはやれない。 だからせめて、滅びた名家の呪縛から彼らを解放することにした。 家臣たちには財を分け与えて暇を出した。 今頃、新たに仕える将を探してるはずだよ」 佐助「義元さんは、この先どうするつもりなんですか」 義元「俺は……これからどう生きるべきか、しばらくひとりで考えてみるよ」 光秀「あなたがひとりになることはありえない、義元殿」 義元「え……?」 光秀「お届けものだ。 九兵衛、彼らをここへ」 九兵衛「はっ」 義元「……! お前たち……」 九兵衛さんが引き連れてきたのは…… 幸村たちが森の中で見つけた、今川家家臣の一団だった。 義元「……どうして戻ってきたの」 今川家の家臣「……今になり、ようやくわかりました。 あなたが我々のことを思いやってくださっていたと。 本能寺の戦のさなか、我らが名誉の代償に捨てようとした命を、あなたは拾ってくださった。 ーーーーーーーー 義元「光秀殿。 俺を、ここで殺してほしい」 光秀「殺せ、だと……? なぜ」 義元「そうすれば、諦めの悪い家臣たちも、さすがに受け入れられるだろうから。 今川家が滅んだ事実をね。 その代わり、彼らの命は見逃してくれ。 ……後生だ」 ーーーーーーーー 今川家の家臣「敵に情けをかけられて逃げるおつもりか!? 今度という今度は見損ないましたぞ! 死んでも今川家の誇りを守らねば!」 義元「命を粗末にする人間に、誇りを語る資格はない!」 今川家の家臣「…………っ」 義元「今のは、俺自身への戒めだよ」 ーーーーーーーー 今川家の家臣「我々の仕えるお方は……あなたしかおりません。 しかし、我々のしてきたことを思い返すと、お見せする顔もなく……」 幸村「こいつら、戻るに戻れなくて、お前に隠れて森ん中をうろうろしてたんだよ」 義元「…………」 光秀「俺らを率い、共に義昭様と戦ってはもらえないか?」 義元「義昭様と……?」 光秀さんは、義昭様の陰謀のすべてを義元さんに語った。 その魔手が、織田軍を越え、越後にまで及んでいたことも。 義元「…………」 光秀「義昭様の企ては信長様を倒すことのとどまらない。 日ノ本全土を手に入れようとなさっている。 天下静謐———自身が唯一至高の権力者となり、その他の者をすべて等しく卑しい民として統治する。 その望みを成すためにあの方が選んだ手段が、力のある将の、暗殺だ。 企みを止めない限り、あの方の手は上杉武田にも及ぶだろう」 義元「…………」 長い沈黙のあと、決然とした声が森に響いた。 義元「わかった、将軍を倒す力になろう」 「本当ですか……!」 義元「当分は、当主を続ける必要がありそうだしね」 よかった……! 義元「でも、俺は俺の都合で、勝手に謙信と信玄の元を離れた身。 これ以上、彼らに甘えるわけにはいかないよ」 幸村・佐助「…………っ」 「待ってくれてる人がいるなら……その人達と生きることを選ぶのは、甘えじゃないと思います」 義元「え……?」 「大事な相手がいる場所が、新しい故郷になる……そういうことも、あるんじゃないでしょうか」 一語ずつ、考え考えそう口にすると、義元さんの瞳の奥が揺れた。 義元「……不思議だね。 君の言葉には、やけに心が揺さぶられる」 もし、そう感じてもらえてるんだとしたら…… 「それはきっと、私があなたと同じで、生まれ育った故郷をなくした人間だからかもしれません」 幸村・佐助「…………」 光秀「…………」 私は偶然、この時代にタイムスリップしてきて、現代に帰らないと決めた。 戦で故郷を失った義元さんとは、状況が全然違うけど……ひとつ共通点がある。 故郷から遠く離れた場所で、かけがえのない出会いをしたことだ 「二度と故郷には帰れない。 その分余計に……新たに出会った大事な人のかけがえなさが、よくわかるんです」 佐助「美香さん、君は……」 「……こんな形で伝えることになってごめんね、佐助くん。 でも、決めたんだ。 私はここで出会った人たちと……光秀さんと、新しい人生を歩むって」 目を見開く佐助くんに、私は自然と微笑んでいた。 後悔は、ない。 義元「……わかった。 美香がそこまで言うのなら、俺も意固地にならずに、もう少し迷ってみることにしようかな」 「ぜひ、そうしてください!」 幸村「ったく、めんどくせーな。 いーから『帰る』って言え!」 佐助「まあまあ。 前向きに考えてくれるようになっただけでも一歩前進だ」 義元「……ありがとう、美香。 君には感謝してもしきれない」 「いいえ」 義元「嬉しかったよ。 君が、俺を追いかけてきてくれて」 優美な仕草で伸びてきた手が、私の手に触れようとした時、 わっ 光秀さんに、ぐいっと肩を抱き寄せられた。 光秀「義元殿、ゆめゆめ勘違いなさらぬよう」 義元「勘違いって?」 光秀「こはるは幸村殿と佐助殿に頼まれ、優しさゆえにあなたの説得を引き受けたまで。 今後一切、この娘に必要以上に近づくな」 義元「『必要以上』って、どれくらい? 手を握るくらいは許されるでしょう」 光秀「では言い換えよう。 常に百歩以上こはるから離れていろ」 義元「顔も見えないよ、それじゃ」 光秀「では千歩」 義元「増えたよね」 「あの、光秀さん……、もしかして焼きもちですか? なんて……」 光秀「そうだが、何か?」 っ、冗談のつもりだったのに…… 平然と言い返され、頬がカッと熱くなる。 光秀「自分で言って照れていては世話がないな」 光秀さんは笑って、私の頭をよしよしと撫でた。 義元「ふうん、見せつけてくれるね」 光秀「ご理解いただけたかな?」 義元「問題ないよ。 俺は、気が長い方だから」 私に向かってにっこりと微笑む義元さんは、爽やかな色気を漂わせている。 義元「美香。 気が向いたら、いつでも俺のそばにおいで。 喜んで俺は、君の第三の故郷になるから」 ええっと……冗談、だよね……? 幸村「その辺にしとけ。 美香が困ってるだろーが」 佐助「幸村の言う通りだ。 義元さん、大事な話の途中です。 こはるさんと光秀さんは、あなたを説得するという俺たちの依頼を見事果たしてくれました。 今度は、俺たちが報いる番です。 越後の未来のためにも」 義元「……そうだね」 義元さんの背後で、今川家の家臣たちも深く頷き合う。 光秀さんはにやりと笑い、みんなを見回した。 光秀「ではご一同。 戦支度にかかろうか」 ………… 義昭「……化け狐が、女を連れていると?」 義昭の使者「はっ」 質素な広間で、義昭は脇息にもたれていた身をゆっくりと起こした。 新たな根城には、京から遠くないひなびた小国の城が選ばれた。 光秀に張り付かせていた使者がもたらした知らせに、本能寺で負った傷口が疼く。 義昭の使者「祭りで無礼を働いた愚かな大名が、義昭様の夜伽にと呼び寄せた者です」 義昭「……舞台上で、狐がさらってみせた女か。 あのようなことさえなければ、下賎な女の顔を私が覚えていることなどないのだがのう」 義昭の使者「光秀はや上杉武田の家臣と組み、いずれこの城へ攻め込むつもりのようです。 いかがいたしましょう」 義昭「……ひとつ、揺さぶりをかけてやろう。 私に逆らえばどうなるか……生き地獄を味わうがいい」 光秀「美香は、ここまでだ」 「……はい」 戦へ赴くみんなと一緒にいられたのは、京の町外れまでだった。 私にできることはもう、祈ることだけか…… 待ち受けるのは将軍との決戦———数えてみると、乱世へやってきて今日でちょうど三ヶ月目だ。 あれから佐助くんと、ふたりきりで少しだけ話をした。 佐助くんも、乱世に残る決意をしたそうだ。 私と同じで、この時代で大事な人たちに出会ったから……柔らかな表情でそう話してくれた。 佐助「美香さん、今夜を逃せば俺たちはもう戻れない。 君のファイナルアンサーは?」 「覚悟は決まってるよ。 佐助くんも……」 佐助「ああ、同じだ」 囁き合い、私たちは微笑みを交わした。 九兵衛「さて、我々は先に行っております、光秀様」 佐助「美香さん、行ってきます」 幸村「大人しく待ってろよ、美香」 「行ってらっしゃい! どうか気をつけて」 義元「俺は美香ともう少し、ゆっくり別れを惜しみたいんだけど……」 幸村「いーから一緒に来い、バカ!」 辺りが静かになり、光秀さんと私だけが残された。 九兵衛さん、お別れの時間を作ってくれてありがとう…… 光秀「では美香、約束を守り、良い子にしていろ。 もしも破れば……ひどいぞ?」 ぞくっとするような容赦のない声に、深く頷く。 光秀「それでいい。 約束を守れたら、たっぷりとご褒美をやろう」 光秀さんの手が私の首に触れ、うなじをやんわり撫で上げる。 ぁ……っ この指にすっかり飼いならされた私の肌は、それだけであっけなく疼いた。 「……ちゃんと、守ります。 光秀さんも、約束、守ってくださいね」 答えの代わりに、顎をそっと持ち上げられる。 私は目を閉じて、口づけを待った。 ———それは、一瞬の出来事だった。 ヒュッ———! 光秀「!?」 え……っ? 何かが肩を掠めたと思ったら、燃えるように肌が熱を放ち始めた。 「……っ、あ、れ……、なに、これ……?」 身体がピクリとも動かなくなり、世界が揺れる。 光秀「美香!」 倒れ込んだ私を、たくましい胸板が支えてくれた。 地面に突き刺さった矢が、視界の隅に見える。 何か言おうとするけれど、舌がもつれて動かない。 「あ……う……」 光秀「毒矢か……!」 ……っ、頭が、くらくらする…… 光秀「美香! 美香……!」 「みつ、ひで、さ……」 視界が霞む中、必死に伸ばした手は、光秀さんの頬に触れる直前、鉛のように重くなり、ぶらんと垂れ下がった。 光秀「しっかりしろ! 美香! 美香……!」 感情をむき出しにした声が、遠くなって——— 私の意識は、暗闇に呑み込まれた。 ikemenseriesl.

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